兵法塾 - 戦いの要素 -
兵 法 塾
TOP Ohasi Takeoka SiteMap Link Information WebShop Comment      祈願・三陸復興 2011-2017.3.11 ⑥
『 戦いの要素 』
戦いは、ある時間(Time/期間)に限られた空間(Space/地域)において、我々もしくは、その集団が目的・目標を達成しようとするときに生じる。その目的・目標達成 における障害(困難)が「敵」である。戦いの三要素として我(エネルギー)と敵(エネルギー)と第三者的要素(時・地・中立勢力等)が考えられる。戦いを考えるとき(状況判断)はこれらの三要素を総合的に考える必要がある。エネルギーは戦闘力であり、無形的要素と有形的要素からなる。集団や組織の場合、無形的要素として、リーダー「将帥」の能力(指揮・統率、戦略・戦術、 人格、等)とその集団・勢力の戦闘力(士気・規律、訓練、団結心、資質、等)があり。有形的要素として集団・勢力の人数、装備(武器)、資材、施設、資金(兵站)等がある。
 
戦いの要素

現在の自分の置かれた状況を知り、的確な判断、行動を取るには、自分の力と自分を取り巻く情報(要素)をよく理解する必要がある。個人においては、自分の「判断の力」と「心」と「体」を自在に活用することに努力するが、個人(自分)がそれら個々の集まりである衆団を率いるためには別の情報・努力・工夫が必要である。 孫子の計篇における、道・天・地・将・法・兵衆・士卒・賞罰、及び十三篇の「各篇のテーマ」そのものが戦いの要素と考えることができる。

『 孫 子 』 以下全文、読み下し

(明、嘉靖刊本「孫子集註」底本)--天野鎮雄博士訳・注(1975・講談社文庫)より--

計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間

一、

孫子曰く、兵は國の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざる可からず。故に之を經むるに五事を以てし、之を校するに計を以てして、其の情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。道とは民をして上と意を同じくせしむるなり。故に以て之と死す可く、以て之と生く可くして、危きを畏れざるなり。天とは陰陽・寒暑・時制なり。地とは遠近・険易・広狭・死生なり。将とは智・信・仁・勇・厳なり。法とは曲制・官道・主用なり。凡そ此の五者、将、聞かざるは莫し。之を知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。
故に之を校するに計を以てして、其の情を索む。曰く、主孰れか有道なる、将孰れか有能なる、天地孰れか得たる、法令孰れか行はるる、兵衆孰れか強き、士卒孰れか錬れたる、賞罰孰れか明らかなる。吾、此れを以て勝負を知る。
将、吾が計を聴きて之を用ふれば、必ず勝たん。之に留まらん。将、吾が計を聴きて之を用ひずんば、必ず敗れん。之を去らん。計、利として以て聴かるれば、及ち之が、勢を為して、以て其の外を佐く。勢とは利に因りて権を制するなり。
兵は詭道なり。故に能にして之に不能を示し、用にして之に不用を示し、近くして之に遠きを示し、遠くして之に近きを示し、利して之を誘い、乱して之を取り、実にして之に備え、強くして之を避け、怒りて之を撓し、卑うして之を驕らせ、佚にして之を労し、親しみて之を離し、其の無備を攻め、其の不意に出づ。此れ兵家の勝、先に伝う可からざるなり。
夫れ未だ戦はずして廟算するに、勝つ者は算を得ること多し。未だ戦はずして廟算するに、勝たざる者は算を得ること少なし。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況んや算無きに於てをや。吾、此を以て之を観れば、勝負見はる。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 

二、作戦

孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、馳車千駟、革車千乗、帯甲十萬、千里に糧を饋れば、則ち内外の費、賓客の用、膠漆の材、車甲の奉、日に千金を費す。然る後に十萬の師挙がる。
其の戦を用ふるや、勝も久しければ、則ち兵を鈍らし鋭を挫く。城を攻むれば、則ち力屈す。久しく師を暴せば、則ち國用足らず。夫れ兵を鈍らし鋭を挫き、力を屈し貨を殫さば、則ち諸侯其の弊に乗じて起らん。智者有りと雖も、其の後を善くする能はず。故に兵は拙速を聞く。未だ功の久しきを睹ざるなり。夫れ兵久しうして國に利ある者、未だ之有らざるなり。故に盡く兵を用ふるの害を知らざる者は、則ち盡く兵を用ふるの利を知る能はざるなり。
善く兵を用ふる者は、役、再籍せず、糧、三載せず、用を國に取り、糧を敵に因る。故に軍食足る可し。
國の師に貧しきは、遠く輸ればなり。遠く輸れば、則ち百姓貧し。師に近き者は貴賣す。貴賣すれば、則ち百姓の財竭く。財竭くれば、則ち丘役に急なり。力屈し財中原に殫き、内、家に虚し。百姓の費、十に其の七を去る。公家の費、破車・罷馬・甲冑・矢弩、戟楯・蔽櫓、丘牛・大車、十に其の六を去る。
故に智者は務めて敵に食む。敵の一鐘を食むは、吾が二十鐘に当たる。芑秣一石は、吾が二十石に当たる。
故に敵を殺すは怒なり。敵に取るの利は貨なり。故に車戦に車十乗巳上を得れば、其の先に得たる者を賞して、其の旌旗を更へ、車は雑へて之に乗らしめ、卒は善くして之を養ふ。是を敵に勝ちて強を益すと謂ふ。
故に兵は勝を貴びて、久しきを貴ばず。故に兵を知るの将は、生民の司命、國家安危の主なり。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 
三、謀攻
孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、國を全うするを上と為し、國を破るは之に次ぐ。軍を全うするを上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うするを上と為し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之に次ぐ。是の故に百戦百勝は、善の善なる者に非ざるなり。戦はずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。故に上兵は謀を伐つ。その次は交を伐つ。その次は兵を伐つ。其の下は城を攻む。
城を攻むるの法は、已むを得ざるが為なり。櫓・轒轀を修め、器械を具ふ。三月にして後に成る。距堙又三月にして後に已む。将其の忿に勝へずして、之に蟻附し、士を殺すこと三分の一にして、城抜けざるは、此れ攻むるの災なり。
故に善く兵を用ふる者は、人の兵を屈するも、戦ふに非ざるなり。人の城を抜くも、攻むるに非ざるなり。人の國を毀るも、久しきに非ざるなり。必ず全を以て天下に争ふ。故に兵頓れずして利全かる可し。此れ謀攻の法なり。
故に兵を用ふるの法、十なれば則ち之を囲み、五なれば則ち之を攻め、倍なれば則ち之を分ち、敵すれば則ち能く之と戦ひ、少なれば則ち能く之を逃れ、若かざれば則ち能く之を避く。故に小敵の堅は、大敵の擒なり。
夫れ将は國の輔なり。輔周なれば則ち國必ず強く、輔隙あれば則ち國必ず弱し。故に君の軍に患へらるる所以の者三あり。軍の以て進む可からざるを知らずして、之に進めと謂ひ、軍の以て退く可からざるを知らずして、之に退けと謂ふ。是を縻軍と謂ふ。三軍の事を知らずして、三軍の政を同にすれば、則ち軍士惑ふ。三軍の権を知らずして、三軍の任を同にすれば、則ち軍士疑ふ。三軍既に惑ひ且つ疑はば、則ち諸侯の難至らん。是を軍を乱し勝を引くと謂ふ。故に勝を知るに五有り。以て戦ふ可きと、以て戦ふ可からざるとを知る者は勝つ。衆寡の用を識る者は勝つ。上下欲を同じうする者は勝つ。虞を以て不虞を待つ者は勝つ。将能にして君御せざる者は勝つ。此の五者は勝を知るの道なり。
故に曰く、彼を知り己を知れば、百戦して殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦ふ毎に必ず殆し。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 
四、
孫子曰く、昔の善く戦ふ者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在り。勝つ可きは敵に在り。故に善く戦ふ者は、勝つ可からざるを為し能ふも、敵をして勝つ可からしむる能はず。故に曰く、勝ちは知る可くして、為す可からず、と。
勝つ可からずとは守るなり。勝つ可しとは攻むるなり。守れば足らず、攻むれば余り有り。善く守る者は、九地の下に蔵れ、善く攻むる者は、九天の上に動く。故に能く自ら保ちて、勝を全うす。
勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非らざるなり。戦ひ勝ちて天下善しと曰ふも、善の善なる者に非ざるなり。故に秋毫を挙ぐるは多力と為さず。日月を見るは明目と為さず。雷霆を聞くは聰耳と為さず。古の所謂善く戦ふ者は、勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦ふ者の勝つや、智名無く、勇功無し。
故に其の戦ひ勝つこと忒はずとは、其の措く所必ず勝つなり。巳に敗るるに勝つ者なり。故に善く戦ふ者は、不敗の地に立ちて、敵の敗を失はざるなり。是の故に勝兵は先づ勝ちて、而る後に戦を求め、敗兵は先づ戦ひて、而る後に勝を求む。
善く兵を用ふる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の政を為す。兵法に、一に曰く度、二に曰く量、三に曰く數、四に曰く稱、五に曰く勝。地は度を生じ、度は量を生じ、量は數を生じ、數は稱を生じ、稱は勝を生ず。
故に勝兵は鎰を以て銖を稱るが若く、敗兵は銖を以て鎰を稱るが若し。勝者の民を戦はすや、積水を千仞の谿に決するが若きは、形なり。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 
五、
孫子曰く、凡そ衆を治むること寡を治むるが如くするは、分數是なり。衆を闘はすこと寡をはすが如くするは、形名是なり。三軍の衆、必ず敵を受けて、敗無からしむ可きは、奇正是なり。兵の加ふる所、碬を以て卵に投ずるが如くするは、虚実是なり。
凡そ戦は正を以て合ひ、奇を以て勝つ。故に善く奇を出す者は、窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し。終りて復始まるは、日月是なり。死して復生ずるは、四時是なり。聲は五に過ぎざるも、五聲の變は、勝げて聞く可からず。色は五に過ぎざるも、五色の變は、勝げて観る可からず。味は五に過ぎざるも、五味の變は、勝げて嘗む可からず。奇正の相生ずること、循環の端無きが如し。孰か能く之を窮めん。
激水の疾くして石を漂はすに至る者は、勢なり。鷙鳥の疾くして毀折に至る者は、節なり。是の故に善く戦ふ者は、其の勢險に、其の節短なり。勢は弩を彍るが如くし、節は機を發するが如くす。
紛紛紜紜として戦ひ乱れて、乱す可からず。渾渾沌沌として形圓にして、敗る可からず。
乱は治より生じ、怯は勇より生じ。弱は彊より生ず。治乱は數なり。勇怯は勢なり、彊弱は形なり。
故に善く敵を動かす者は、之に形すれば敵必ず之に従ひ、之に予ふれば敵必ず之を取る。利を以て之を動かし、以て卒に之を待つ。
故に善く戦ふ者は、之を勢に求めて、人を責めず。故に能く人を擇てて勢に任ず。勢に任ずる者は、其の人を戦はしむるや、木石を轉ずるが如し。木石の性、安なれば則ち静に、危なれば則ち動き、方なれば則ち止まり、圓なれば則ち行く。故に善く人を戦はしむるの勢、圓石を千仞の山に轉ずるが如きは、勢なり。
 
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六、虚實
孫子曰く、凡そ先に戦地に處りて敵を待つ者は、佚し、後れて戦地に處りて戦に趨く者は、労す。故に善く戦ふ者は、人を致して人に致されず。能く敵人をして自ら至らしむるは、之を制すればなり。能く敵人をして至るを得ざらしむるは、之を害すればなり。故に敵佚すれば、能く之を労し、飽けば、能く之を餓えしめ、安んずれば、能く之を動かす。其の趨らざる所に出で、其の意はざる所に趨る。千里を行きて労せざるは、無人の地を行けばなり。
攻めて必ず取るは、其の守らざる所を攻むればなり。守りて必ず固きは、其の攻めざる所を守ればなり。故に善く攻むる者は、敵、其の守る所を知らず。善く守る者は、敵、其の攻むる所を知らず。微なるかな、微なるかな、無形に至る。神なるかな、神なるかな、無聲に至る。故に能く敵の司命を為す。進みて禦ぐ可からざるは、其の虚を衝けばなり。退きて追う可からざるは、速にして及ぶ可からざればなり。
故に我戦はんと欲すれば、敵、壘を高くし溝を深くすと雖も、我と戦はざるを得ざるは、其の必ず救う所を攻むればなり。我戦を欲せざれば、地に畫して之を守るも、敵、我と戦ふを得ざるは、其の之く所に乖けばなり。
故に人を形して我無形なれば、則ち我専にして敵分る。我専にして一と為り、敵分れて十と為れば、是十を以て其の一を攻むるなり。則ち我衆くして敵寡し。能く衆を以て寡を撃てば、則ち吾の與に戦ふ所は約なり。吾が與に戦ふ所の地、知る可からず。知る可からざれば、則ち敵の備ふる所の者多し。敵の備ふる所の者多ければ、則ち吾が與に戦ふ所の者寡し。故に前に備ふれば則ち後寡く、後に備ふれば則ち前寡く、左に備ふれば則ち右寡く、右に備ふれば則ち左寡し。備へざる所無ければ、則ち寡からざる所無し。寡きは人に備ふる者なり。衆きは人をして己に備へしむる者なり。故に戦の地を知り、戦の日を知れば、則ち千里にして合戦す可し。戦の地を知らず、戦の日を知らざれば、則ち左、右を救ふ能はず、右、左を救ふ能はず、前、後を救ふ能はず、後、前を救ふ能はず。而るを況んや遠きは数十里、近きは数里なるをや。
吾を以て之を度るに、越人の兵多しと雖も、亦奚ぞ勝敗に益あらん。故に曰く、勝は為す可きなり。敵衆しと雖も、闘ふこと無からしむ可し、と。
故に之を策りて得失の計を知り、之を作して動静の理を知り、之を形して死生の地を知り、之に角れて有餘不足の處を知る。
故に兵を形するの極は、無形に至る。無形なれば、則ち深間も窺ふ能はず。形に因りて勝を衆に錯く。衆知る能はず。人皆我が勝つ所以の形を知りて、吾が勝を制する所以の形を知る莫し。故に其の戦ひ勝つに復びせずして、形を無窮に鷹ず。
夫れ兵の形は水に象る。水の形は高きを避けて下きに赴き、兵の形は實を避けて虚を撃つ。水は地に因りて流を制し、兵は敵に因りて勝を制す。故に兵は常勢無く、水は常形無し。能く敵に因りて変化し、而して勝を取る者、之を神と謂ふ。故に五行に常勝無く、四時に常位無く、日に短長有り、月に死生有り。
 
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七、軍争
孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、命を君に受け、軍を合はせ衆を聚め、和を交へて舎するに、軍争より難きは莫し。軍争の難きは、迂を以て直と為し、患を以て利と為せばなり。故に其の途を迂にして、之を誘ふに利を以てし、人に後れて発し、人に先んじて至る。此れ迂直の計を知る者なり。
故に軍争は利の為にせば、軍争は危為り。軍を挙げて利を争へば、則ち及ばず、軍を委てて利を争へば、則ち輜重捐てらるればなり。是の故に甲を巻きて走り、日夜處らず、道を倍して兼行し、百里にして利を争へば、則ち三将軍を擒にす。勁き者は先んじ、疲るる者は後れ、其の法十が一にして至ればなり。五十里にして利を争へば、則ち上将軍を厥す。其の法半ば至ればなり。三十里にして利を争へば、則ち三分の二至る。是の故に軍、輜重無ければ則ち亡び、糧食無ければ則ち亡び、委積無ければ則ち亡ぶ。故に諸侯の謀を知らざれば、豫め交はること能はず。山林・険阻・沮澤の形を知らざれば、軍を行ること能はず。郷導を用ひざれば、地の利を得ること能はず。
故に兵は詐を以て立ち、利を以て動き、分合を以て変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如く、郷に掠めて衆に分ち、地を廓めて利を分ち、権を懸けて動く。先ず迂直の計を知る者は勝つ。此れ軍争の法なり。
軍政に曰く、言うこと相聞えず、故に金鼓を為る。視ること相見えず、故に旌旗を為る、と。夫れ金鼓・旌旗は、人の耳目を一にする所以なり。人既に専一なれば、則ち勇者も獨り進むを得ず、怯者も獨り退くを得ず。此れ衆を用ふるの法なり。故に夜戦には火鼓を多くし、晝戦には旌旗を多くす。人の耳目を変ずる所以なり。故に三軍は気を奪う可く、将軍は心を奪う可し。
是の故に朝気は鋭く、晝気は惰り、暮気は歸る。故に善く兵を用ふる者は、其の鋭気を避け、其の惰歸を撃つ。此れ気を治むる者なり。治を以て乱を待ち、静を以て譁を待つ。此れ心を治むる者なり。近きを以て遠きを待ち、佚を以て労を待ち、飽を以て饑を待つ。此れ力を治むる者なり。正正の旗を迎ふる無かれ、堂堂の陳を撃つ勿かれ。此れ変を治むる者なり。
故に兵を用ふるの法、高陵には向ふ勿かれ、丘を背にするには逆ふ勿れ、佯り北ぐるには従ふ勿れ、鋭卒は攻むる勿かれ、餌兵は食ふ勿かれ、歸師は遏むる勿かれ、師を圍めば必ず闕き、窮寇には迫る勿かれ。此れ兵を用ふるの法なり。
 
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八、九變
孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、将、命を君に受け、軍を合はせ衆を聚むれば、圮地には舍る無く、衢地には交はり合ひ、絶地には留まる無く、圍地には則ち謀り、死地には則ち戦ふ。
塗も由らざる所有り、軍も撃たざる所有り、城も攻めざる所有り、地も争はざる所有り、君命も受けざる所有り。
故に将、九変の地利に通ずれば、兵を用ふるを知る。将、九変の利に通ぜざれば、地形を知ると雖も、地の利を得る能はず。兵を治むるに、九変の術を知らざれば、五利を知ると雖も、人の用を得る能はず。
是の故に智者の慮は、必ず利害を雑ふ。利を雑へて務むれば、信ぶ可し。害を雑へて患ふれば、解く可し。是の故に諸侯を屈するには害を以てし、諸侯を役するには業を以てし、諸侯を趨らすには利を以てす。
故に兵を用ふるの法、其の来らざるを恃むこと無く、吾が以て待つ有るを恃むなり。其の攻めざるを恃むこと無く、吾が攻む可からざる所有るを恃むなり。
故に将に五危有り。必死は殺す可く、必生は虜とす可く、忿速は侮る可く、廉潔は辱しむ可く、愛民は煩はす可し。凡そ此の五者は将の過なり、兵を用ふるの災なり。軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てす。察せざる可からざるなり。
 
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九、行軍

孫子曰く、凡そ軍を處き敵を相するに、山を絶れば谷に依る。生を視て高きに處る。隆きに戦ひて登る無かれ。此れ山に處るの軍なり。水を絶れば必ず水より遠ざかる。客、水を絶りて来たらば、之を水内に迎ふる勿かれ。半ば濟らしめて之を撃たば利なり。戦はんと欲すれば、水に附きて客を迎ふる無かれ。生を視て高きに處る。水流を迎ふる無かれ。此れ水上に處るの軍なり。斥澤を絶れば、惟亟かに去りて留まる無かれ。若し軍を斥澤の中に交ふれば、必ず水草に依りて衆樹を背にせよ。此れ斥澤に處るの軍なり。平陸には易きに處りて高きを右背にす。死を前にし生を後にす。此れ平陸に處るの軍なり。凡そ此の四軍の利は、黄帝の四帝に勝ちし所以なり。
凡そ軍は高きを好んで下きを惡み、陽を貴んで陰を賤しみ、生を養ひて實に處る。軍に百疾無くんば、是を必勝と謂ふ。丘陵・堤防には、必ず其の陽に處りて、之を右背にす。此れ兵の利、地の助けなり。
上、雨ふりて水沫至らば、渉らんと欲する者は其の定まるを待て。凡そ地に絶澗・天井・天牢・天羅・天陥・天隙有らば、必ず亟かに之を去りて近づく勿かれ。吾は之に遠ざかり、敵は之に近づかしめ、吾は之を迎へ、敵は之を背にせしめよ。
軍行に険阻・潢井・葭葦・山林・翳薈有れば、必ず謹んで之を覆索せよ。此れ伏姦の處る所なり。敵近くして静なるは、其の険を恃むなり。遠くして挑戦するは、人の進むを欲するなり。其の居る所に易きは、利あるなり。衆樹動くは、来るなり。衆草障り多きは、疑はしむるなり。鳥起つは、伏なり。獣駭くは、覆なり。塵高くして鋭きは、車来るなり。卑くして廣きは、徒来るなり。散じて條達するは、樵採するなり。少くして往来するは、軍を営むなり。
辭卑くして備を益すは、進むなり。辭彊くして進驅するは、退くなり。輜車先に出でて、其の側に居るは、陳するなり。約無くして和を請ふは、謀るなり。奔走して兵車を陳ぬるは、期するなり。半ば進み半ば退くは、誘ふなり。杖つきて立つは、飢うるなり。汲みて先づ飲むは、渇けるなり。利を見て進まざるは、労せるなり。鳥集まるは、虚なり。夜呼ぶは、恐るるなり。軍擾るるは、将重からざるなり。旌旗動くは、乱るるなり。吏怒るは、倦めるなり。馬に粟し肉食して、軍に缻を懸くること無く、其の舎に返らざるは、窮寇なり。諄諄翕翕として、徐に人と言ふは、衆を失へるなり。數賞するは、窘しめるなり。數罰するは、困しめるなり。兵怒りて相迎へ、久しくして合はず、又相去らざるは、必ず謹んで之を察せよ。
兵は多きを益とするに非ざるなり。惟武進する無かれ。以て力を併せ敵を料るに足りて、人を取るのみ。夫れ惟慮無くして、敵を易る者は、必ず人に擒にせらる。
卒未だ親附せずして之を罰すれば、則ち服せず。服せざれば則ち用ひ難し。卒已に親附して罰行はざれば、則ち用ふ可からず。故に之に令するに文を以てし、之を齊ふるに武を以てす。是を必ず取ると謂ふ。令素より行はれて、以て其の民に教ふれば、則ち民服す。令素より行はれずして、以て其の民に教ふれば、則ち民服せず。令素より行はるれば、衆と相得るなり。
 
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十、地形
孫子曰く、地形に、通なる者有り、挂なる者有り、支なる者有り、隘なる者有り、険なる者有り、遠なる者有り。我以て往く可く、彼以て来る可きを通と曰ふ。通形は、先づ高陽に居りて、糧道を利し、以て戦へば則ち利あり。以て往く可くして、以て返り難きを挂と曰ふ。挂形は、敵、備無ければ、出でて之に勝つ。敵若し備有り、出でて勝たざれば、以て返り難くして不利なり。我出でて利あらず、彼出でて利あらざるを支と曰ふ。支形は、敵、我を利すと雖も、我出づること無かれ。引きて之を去る。敵をして半ば出でしめて之を撃たば利あり。隘形は、我先づ之に居らば、必ず之を盈たして以て敵を待つ。若し敵先づ之に居り、盈つれば従ふこと勿かれ。盈たざれば之に従ふ。険形は、我先づ之に居らば、必ず高陽に居り、以て敵を待つ。若し敵先づ之に居らば、引きて之を去る。従ふこと勿かれ。遠形は、勢均しければ、以て戦を挑み難し。戦ひて利あらず。凡そ此の六者は、地の道なり。将の至任、察せざる可からざるなり。
故に兵に走る者有り、弛む者有り、陥る者有り、崩るる者有り、乱るる者有り、北ぐる者有り。凡そ此の六者は天の災に非ず、将の過なり。夫れ勢均しくして、一を以て十を撃つを走と曰ふ。卒強く吏弱きを弛と曰ふ。吏強く卒弱きを陥と曰ふ。大吏怒つて服せず、敵に遭ひ懟みて自ら戦ひ、将其の能を知らざるを崩と曰ふ。将弱くして厳しからず、教道明かならず、吏卒常無く、兵を陳ぬるに縦横なるを乱と曰ふ。将、敵を料る能はず、少を以て衆に合はせ、弱を以て強を撃ち、兵に選鋒無きを北と曰ふ。凡そ此の六者は、敗の道なり、将の至任、察せざる可からざるなり。
夫れ地形は兵の助けなり。敵を料り勝を制し、険阨・遠近を計るは、上将の道なり。此を知りて戦に用ふれば、必ず勝つ。此れを知りて戦に用ひざれば、必ず敗る。
故に戦道必ず勝たば、主、戦ふ無かれと曰ふも、必ず戦て可なり。戦道勝たざれば、主、必ず戦へと曰ふも、戦ふこと無くして可なり。故に進んで名を求めず、退きて罪を避けず。唯人を是れ保ちて、利、主に合ふ。國の寶なり。
卒を視ること嬰児の如し、故に之と深谿に赴く可し。卒を視ること愛子の如し、故に之と倶に死す可し。厚くして使ふ能はず、愛して令する能はず、乱れて治むる能はず。譬へば驕子の若し、用ふ可からず。
吾が卒の以て撃つ可きを知りて、敵の撃つ可からざるを知らざるは、勝の半ばなり。敵の撃つ可きを知りて、吾が卒の以て撃つ可きを知りて、地形の以て戦ふ可からざるを知らざるは、勝の半ばなり。故に兵を知る者は、動いて迷はず、挙げて窮せず。故に曰く、彼を知り己を知れば、勝乃ち殆からず。天を知り地を知れば、勝乃ち窮らず、と。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 
十一、九地
孫子曰く、兵を用ふるの法、散地有り、輕地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、圮地有り、圍地有り、死地有り。諸侯自ら其の地に戦ふを、散地と為す。人の地に入りて深からざるを、輕地と為す。我得れば則ち利あり、彼得るも亦利あるを、争地と為す。我以て往く可く、彼以て来る可きを、交地と為す。諸侯の地三属して、先に至りて天下の衆を得るを、衢地と為す。人の地に入ること深く、城邑を背にすること多きを、重地と為す。山林・険阻・沮澤、凡そ行き難きの道を行くを、圮地と為す。由りて入る所の者隘く、從りて歸る所の者迂にして、彼の寡、以て吾の衆を撃つ可きを、圍地となす。疾く戦へば則ち存し、疾く戦はざれば則ち亡ぶるを、死地と為す。是の故に、散地には則ち戦ふこと無く、輕地には則ち止まること無く、争地には則ち攻むること無く、交地には則ち絶つこと無く、衢地には則ち交を合はせ、重地には則ち掠め、圮地には則ち行き、圍地には則ち謀り、死地には則ち戦ふ。
所謂、古の善く兵を用ふる者は、能く敵人をして、前後相及ばず、衆寡相恃まず、貴賎相救はず、上下相収めず、卒離れて集まらず、兵合ふも齊はざらしむ。利に合ひて動き、利に合はずして止む。
敢て問ふ、敵衆く整ひて将に来たらんとす、之を待つこと若何、と。曰く、先づ其の愛する所を奪へば則ち聴く。兵の情は、速なるを主とす。人の及ばざるに乗じ、慮らざるの道に由り、其の戒めざる所を攻む、と。
凡そ客為るの道、深く入れば則ち専にして、主人克たず。饒野に掠めて、三軍食を足し、謹み養ひて労すること勿く、気を併せ力を積みて兵を運らし、計謀して測る可からざるを為し、之を往く所無きに投ずれば、死すとも且つ北げず、死せば、焉くんぞ士人力を盡すを得ざらん。兵士甚だ陥れば、則ち懼れず。往く所無ければ、則ち固し。深く入れば、則ち拘す。已むを得ざれば、則ち闘ふ。是の故に其の兵、修めずして戒め、求めずして得、約せずして親しみ、令せずして信あり。祥を禁じ疑を去れば、死に至るまで之く所無し、吾が士餘財無し、貨を惡むに非ざるなり。餘命無し、壽を惡むに非ざるなり。令発するの日、士卒の坐する者涕襟を霑し、偃臥する者涕頤に交はる。之を往く所無きに投ずれば、諸劌の勇なり。
故に善く兵を用ふるは、譬へば率然の如し。率然とは常山の虵なり。其の首を撃てば則ち尾至り、其の尾を撃てば則ち首至り、其の中を撃てば則ち首尾倶に至る。敢て問ふ、兵は率然の如くならしむ可きか、と。曰く、可なり。夫れ呉人と越人とは相惡むも、其の船を同じくして濟り風に遇ふに當りて、其の相救ふこと、左右の手の如し、と。是の故に馬を方べ輪を埋むるも、未だ恃むに足らざるなり。勇を齊へて一の若くするは、政の道なり。剛柔皆得るは、地の理なり。故に善く兵を用ふる者は、手を攜へて一人を使ふが若くす。已むを得ざればなり。
将軍の事は、静にして以て幽に、正にして以て治なり。能く士卒の耳目を愚にして、之をして知ること無からしむ。其の事を易へ、其の謀を革めて、人をして識ること無からしむ。其の居を易へ、其の途を迂にして、人をして慮ること得ざらしむ。帥いて之と期するや、高きに登りて其の梯を去るが如くし、帥いて之と深く諸侯の地に入りて、其の機を発するや、船を焚き釜を破りて、群羊を驅るが若く、驅られて往き、驅られて来り、之く所を知る莫し。三軍の衆を聚めて、之を険に投ず。此を将軍の事と謂ふなり。
九地の變、屈伸の利、人情の理、察せざる可からず。
凡そ客為るの道、深ければ則ち専、浅ければ則ち散なり。國を去り境を越えて師する者は、絶地なり。四達する者は、衢地なり。入ること深き者は、重地なり。入ること浅き者は、輕地なり。固を背にし隘を前にする者は、圍地なり。往く所無き者は、死地なり。是の故に散地には吾将に其の志を一にせんとす。輕地には吾将に之をして屬せしめんとす。争地には吾将に其の後に赴かんとす。交地には吾将に其の守りを謹まんとす。衢地には吾将に其の結びを固くせんとす。重地には吾将に其の食を継がんとす。圮地には吾将に其の塗を進まんとす。圍地には吾将に其の闕を塞がんとす。死地には吾将に之に示すに活きざるを以てせんとす。故に兵の情、圍まるれば則ち禦ぎ、已むを得ざれば則ち闘ひ、過ぐれば則ち従ふ。
是の故に諸侯の謀を知らざれば、預め交はること能はず。山林・険阻・沮澤の形を知らざれば、軍を行ること能はず。郷導を用ひざれば、地の利を得ること能はず。
四五の者、一をも知らざれば、覇王の兵に非ず。夫れ覇王の兵は、大國を伐てば、則ち其の衆聚まるを得ず、威、敵に加ふれば、則ち其の交はり、合ふを得ず。是の故に天下の交を争はず、天下の権を養はず。己の私を信べ、威、敵に加はる。故に其の城抜く可く、其の國隳る可し。
無法の賞を施し、無政の令を懸け、三軍の衆を犯りて、一人を使ふが若くす。之を犯るに事を以てして、告ぐるに言を以てすること勿かれ。之を犯るに利を以てして、告ぐるに害を以てすること勿かれ。之を亡地に投じて、然る後に存し、之を死地に陥れて、然る後に生く。夫れ衆は害に陥りて、然る後に能く勝敗を為す。
故に兵を為むるの事は、敵の意に順詳するに在り。敵を一向に併せて、千里にして将を殺す。此を巧みに能く事を成す者と謂ふなり。是の故に政挙るの日、關を夷め符を折りて、其の使を通ずること無く、廊廟の上に厲まし、以て其の事を誅む。敵人開闔すれば、必ず亟かに之に入り、其の愛する所を先にして、微かに之と期し、踐墨して敵に随ひ、以て戦事を決す。是の故に始めは處女の如し、敵人戸を開く。後は脱兎の如し、敵拒ぐに及ばず。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 
十二、火攻
孫子曰く、凡そ火攻に五有り、一に曰く、人を火く、二に曰く、積を火く、三に曰く、輜を火く、四に曰く、庫を火く、五に曰く、隊を火く、と。火を行ふに必ず因有り。煙火は必ず素より具ふ。火を発するに時有り。火を起すに日有り、時とは天の燥けるなり。日とは月の箕・壁・翼・軫に在るなり。凡そ此の四宿は風起るの日なり。
凡そ火攻は必ず五火の變に因りて之に應ず。火、内より発すれば、則ち早く之に外より鷹ぜよ。火発して兵静なれば、待ちて攻むること勿かれ。其の火力を極め、従ふ可くして之に従ひ、従ふ可からずして止めよ。火、外より発す可くんば、内に待つこと無く、時を以て之を発せよ。火、上風に発し、下風を攻むること無かれ。晝風は久しく、夜風は止む。凡そ軍は必ず五火の変有るを知り、数を以て之を守る。
故に火を以て攻を佐くる者は明なり。水を以て攻を佐くる者は強なり。水は以て絶つ可くして、以て奪ふ可からず。夫れ戦ひ勝ち攻め取りて、其の功を修めざるは凶なり。命じて費留と曰ふ。
故に曰く、明主は之を慮り、良将は之を修む。利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用ひず、危に非ざれば戦はず。主は怒りを以て師を興す可からず、将は慍りを以て戦を致す可からず。利に合ひて動き、利に合はずして止む。怒は以て喜びに復る可く、慍りは以て悦びに復る可し。亡國は以て存に復る可からず、死者は以て生に復る可からず。故に明君は之を慎み、良将は之を警む。此れ國を安んじ軍を全うするの道なり。
 
計 作戦 謀攻 形 勢 虚實 軍争 九變 行軍 地形 九地 火攻 用間
 
十三、用間
孫子曰く、凡そ師を興すこと十萬、出征すること千里なれば、百姓の費、公家の奉、日に千金を費す。内外騒動し、道路に怠りて、事を操るを得ざる者七十萬家、相守ること数年にして、以て一日の勝を争ふ。而るに爵禄百金を愛しみて、敵の情を知らざるは、不仁の至りなり。人の将に非ず、主の佐に非ず、勝の主に非ざるなり。故に明君賢将の動きて人に勝ち、成功衆より出づる所以の者は、先知なり。先知は鬼神に取る可からず、事に象る可からず、度に験す可からず。必ず人に取りて、敵の情を知る者なり。故に間を用ふ。
五有り、因間有り、内間有り、反間有り、死間有り、生間有り。五間倶に起りて、其の道を知る莫し。是を神紀と謂ふ。人君の寶なり。因間とは、其の郷人に因りて之を用ふ。内間とは、其の官人に因りて之を用ふ。反間とは、其の敵間に因りて之を用ふ。死間とは、誑りの事を外に為し、吾が間をして之を知らしめて、敵に傅ふるの間なり。生間とは、反りて報ずるなり。
故に三軍の事、間より親しきは莫く、賞は間より厚きは莫く、事は間より密かなるは莫し。聖智に非ざれば、間を用ふる能はず。仁義に非ざれば、間を使ふ能はず。微妙に非ざれば、間の實を得る能はず。微なるかな、微なるかな、間を用ひざる所無し。間事未だ発せずして先づ聞ゆれば、間と告ぐる所の者とは皆死す。
凡そ軍の撃たんと欲する所、城の攻めんと欲する所、人の殺さんと欲する所、必ず先づ其の守将・左右・謁者・門者・舎人の姓名を知るに、吾が間をして必ず之を索め知らしむ。必ず敵人の間の来りて我を間する者を索め、因りて之を利し、導きて之を舎す。故に反間は得て用ふ可きなり。是に因りて之を知る。故に郷間・内間は得て使ふ可きなり。故に因りて之を知る。故に死間は誑りの事を為して、敵に告げしむ可し。是に因りて之を知る。故に生間は期の如くならしむ可し。五間の事、主必ず之を知る。之を知るは必ず反間に在り。故に反間は厚くせざる可からざるなり。

昔殷の興るや、伊摯、夏に在り。周の興るや、呂牙、殷に在り。故に惟明君・賢将のみ能く上智を以て間と為す者にして、必ず大功を成す。此れ兵の要にして、三軍の恃みて動く所なり。

 

 

 
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